大白川の森(おおしらかわのもり)
白水滝を含む大白川一帯は、昭和30年(1955年)に白山国定公園に指定され、昭和37年(1962年)には白山国立公園へと昇格しました。以降、自然公園法による厳格な保護が行われてきました。白水滝そのものは「特別保護地区」に指定され、猿ヶ馬場や観瀑台も「特別地域」に区分されており、植栽や伐採、放牧、たき火など人為的な影響が強く制限されています。このため、大白川の森は今日まで原生に近い姿を保ち続けています。
日本は国土の約3分の2を森林が覆う「森林大国」であり、そのうち自然の力で成立した天然林は地域ごとに多様な姿を見せます。大白川周辺もその代表例のひとつです。標高約1,600メートル以下ではブナを主体とした冷温帯性の落葉広葉樹林が広がり、夏は深緑、秋は紅葉、冬は雪に包まれる豊かな季節変化を見せます。

奥に新雪の白山御前峰・剣ヶ峰が見える

そんな大白川の森の最も大きな特徴はブナ林の中にミズナラの巨木が混交しているところです。そしてそのミズナラの巨木は平均直径が116㎝、最大直径が208㎝にも達し、日本では類のないほどの巨木です。
例えば国指定天然記念物で日本最大と考えられる「小黒川のミズナラ」に次ぐようなサイズであり、この様な巨木が白水滝周辺には、あちらこちらに散在しています。なぜこのような森がつくられたのかは謎ですが、大白川のブナの巨木の直径が100㎝程で、さらに直近の白山の噴火(1652年)後に森がつくられたことと併せて考えるとブナの樹齢は約340年と推定されます。
一方でミズナラの最大直径は2mを超えており、北海道のミズナラ林の研究では、直径が80㎝以上のミズナラの樹齢は400年以上に達するとされ、単純に倍以上の直径を持つ大白川のミズナラは樹齢800年に達するとも推測されます。
このことからミズナラは340年前の噴火を生き抜いた巨木なのかもしれません。このように噴火後の大白川の森の形成過程を想像しながら森を歩いてみると違った大白川の森の姿が見えてきます。



また、大白川の森は単に植物の宝庫であるだけでなく、修験者が白水滝で身を清めたのちに修行へと分け入る聖域でもありました。水と森に守られた大白川の環境は、自然と信仰が重なり合う場として独特の文化を育んできたのです。
現在、大白川の森は学術研究の場としても注目されています。岐阜大学などによる森林生態学の調査では、数十年にわたりブナ林の成長や植生の変化が記録されており、地球環境や気候変動を考えるうえでも重要な研究対象とされています。
白山の噴火が生んだ地に根を張り、数百年の時をかけて育まれてきた大白川の森。その豊かな姿は、自然の力と人々の暮らしや信仰が織りなす「生きた文化財」として、これからも守り伝えられていきます。
